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いわてマナビィマガジン274

No.274 (令和5年度第16号) 2023.12.8

災害後の学びの場の復旧に向けて
~知っていますか?
「文教施設災害復旧制度」~


災害発生時に少しでも被害を少なくするための防災や減災の取組は、東日本大震災津波の経験を踏まえ、県内のあらゆる場所や場面で行われています。しかし、災害発生時には、道路や建物の損壊など、どうしても免れることのできない被害が発生することがあり、学校施設や社会教育施設なども例外ではありません。そのような中で、少しでも早く、学びの場を再建するための制度があることを御存知でしょうか。今回は、災害復旧制度についてクローズアップしてみたいと思います。

【東日本大震災による社会教育施設の被害】

平成23年3月11日東日本大震災発生時、岩手県内の公民館や図書館などの社会教育・文化施設では県・市町村施設合わせて679施設中248施設が被災しました。そのうち沿岸被災地を中心に合計73施設が「公立社会教育施設災害復旧事業」により国の補助を受けて復旧しました。岩手県立生涯学習推進センターもその一つです。沿岸市町村の社会教育施設の中には、復旧に時間がかかり完了が令和3年度となった施設もありました。


【公立学校施設における災害復旧制度】

教育施設のうち、公立学校については、学校教育の円滑な実施を確保することを目的として、「公立学校施設災害復旧費国庫負担法」(昭和28年)により、災害復旧に要する経費の2/3を国が一部負担する制度があります。一部負担といっても、地方交付税措置により県や市町村の実質的負担が1.7%となり、激甚災害の対象となった場合には、さらに国庫負担率が引き上げられることなどから、ほぼ全額に近い額を国が負担する制度です。

その範囲は、校舎などの建物のみならず、台帳に登録されている教材や備品、教員住宅なども含まれ、児童生徒の安全確保、教育環境の早急な回復のための応急措置として、本復旧までの応急仮設校舎も対象となります。

ただし、制度の対象となる災害(降雨、防風、洪水、高潮、津波、地震、大火、噴火降灰等)の定義や建物の規模などで適用の可否があり、全壊・半壊・大破・大破に至らないものなど、被害の程度によって新築復旧や補修復旧といった違いがあります。

あくまでも、被災前の位置に被災施設と形状、寸法及び材質の等しい施設に復旧する「原形復旧」が原則となります。災害前よりも規模が大きくなったり、設備が充実したりする場合は、その部分は対象とはなりません。

もし、原形復旧が不可能な場合は、施設の従前の効用を復旧するものとして、また原形復旧が著しく困難又は不適当である場合には、被災した施設に代わるべき必要な施設として、場所を変更したり新たな形の建物としたりすることなどが認められれば、その費用が補助金として算出されます。

なお、条件は異なりますが、私立学校にも災害復旧にかかる制度があります。

【公立社会教育施設における災害復旧制度】

学校と同様に、公立社会教育施設にも災害復旧制度があります。「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律(いわゆる激甚法」(昭和37年)に基づいて、社会教育の円滑な実施を確保することを目的とし、公民館、図書館、体育館、運動場、水泳プール、博物館、青年の家、視聴覚センター、婦人教育会館、少年自然の家、地域改善対策集会所、柔道道場、文化施設、相撲場、漕艇場、生涯学習センター、その他文部科学大臣が財務大臣と協議して定める施設等が、災害復旧補助の対象となります。

補助率や補助の内容は公立学校の場合に準じますが補助対象となるには、

① 災害が「激甚災害」として政令で指定されること
② 「激甚法第16条」(公立社会教育施設災害復旧事業に対する補助)の適用が政令で指定されること
③ 施設の設置者である地方公共団体(都道府県・市町村)が「特定地方公共団体」として指定されること

以上、3つの要件を満たす必要があります。


【来るべき災害に備えておきたいこと】

もし、災害が発生し学校や社会教育施設などが被災し、災害復旧制度の対象となる場合には、様々な手続きが必要となりますが、ここでは、平常時から備えておきたいことについて考えてみます。

災害復旧制度補助事業の対象となるためには、施設を管理する県や市町村が事業計画書を作成し文部科学省に申請する必要があります。その、事業計画書に基づき、都道府県が日程調整や会場準備などを行い、文部科学省の調査官と財務省(岩手県は東北財務局)の立会官の現地調査により確認を受けることとなります。

また、事業計画書で重要なのが写真や動画による被害が生じたことの証明です。特にも、社会教育施設は、地域住民にとって重要な活動の場・拠点であることから、安全確保や早期の復旧のために住民がボランティアで片付けなどを行ったり、調査前に事前着工を行ったりすることがありますが、被災状況を確認できない場合には、補助の対象外となってしまうことがあります。そのために、スケール等を添えて被災状況を的確に把握できるように写真や動画を明瞭に撮影しておくことが大切です。加えて、災害のない平常時から写真や動画を撮影しておくことは、被害の程度を客観的に証明するためにも有効であると思われます。

学校や社会教育施設においては、年に一度は台帳を基に備品点検を行っているのではないでしょうか。このことは、平常時のみならず、災害復旧にかかる現地調査でも役割を果たすものとなります。

今回、「文教施設災害復旧制度」をテーマに掲げた理由は、筆者が県の社会教育施設担当だった際に、国と市町村をつなぐ役割として、公立社会教育施設災害復旧事業に携わった経験から、日頃の備えの大切さを身に染みて感じたからです。生涯学習や社会教育関係の事業は、講座や研修会などほとんどがソフト面での業務である中、災害復旧という施設などを扱うハード面の業務は、ほとんど経験したことがない中で、地域住民の学びの場を保証するための大変重要なミッションでした。

近年は、沿岸部における津波被害だけでなく、これまで見られなかった気象状況により、水害・土砂災害など、内陸部でも思いもよらない災害による被害が発生しています。学びの場の早期復旧のためにもまた違った角度から日頃の備えをしておくことが大切です。

【参考】https://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/bousai/main4_a12.htm(文部科学省Webサイト)

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 今後の事業実施予定
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【2月】1日(木)~2日(金)
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~岩手の人づくり・つながりづくり・地域づくりフォーラム2023~
詳しくは、https://manabinet.pref.iwate.jp/index.php/event/060201-02/

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発行:岩手県立生涯学習推進センター (花巻市北湯口2-82-13)  編集:澤柳健一

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