5月2日配信

体験

　先日、十数年前に引っ越した際の未開封だった段ボール箱を開けた時のこと。中からDVDが出てきました。タイトルは「ほしのこえ」(2002年）。新海誠監督の商業デビュー作です。荷物整理は途中のまま、DVDを視聴してしまいました。
　30分にも満たない作品ですが、新海監督は監督・脚本・演出・作画・美術・編集のほとんどを一人で手がけ、7か月かかって制作しました。新海監督の描く風景の美しさはこの作品ですでに現れています。新海監督は自宅にあるパソコン１台で制作したとのこと。当時は、パソコンがあればこんなこともできるんだ、と思ったものでした。

　現在、学校では一人一台端末を整備し、小学校から「プログラミング教育」を実施しています。（プログラミング教育については「すこやかマガジン第829号【華麗（カレー）にプログラミング！？】でも書きましたのでそちらもご覧ください）これは単にプログラミング言語を覚えたり、技能を習得したりすることをねらいとしているのではなく、「コンピュータ等を上手に活用してよりよい社会を築いていこうとする態度などを育む」ことをねらいの一つとしています。つまりは「コンピュータを道具として使って何かを作り出すことができるようになる」ことを狙いとしているとも言えます。例えば新海誠監督は「コンピュータを道具として」アニメ作品を作り出しました。このようにコンピュータを使えばこれまで多くの人の手を必要としたことを一人でこなすこともできるのです。

　ただし、コンピュータを使うことができれば、新海監督のようにアニメ作品を作ることができるわけではありません。脚本を書く文章作成能力、作画するための絵を描く能力など、多様な能力を必要とするのは言うまでもありません。これらの能力は学校での学習で基礎を身につけることはできます。それに加えて作品作りには「想像力」「発想力」「感受性」・・・様々な能力が必要になります。これらは単に学校で勉強して身につくものではありません。幼い頃からの体験により何かに気づき、感じ、行動することを通して育まれるものです。それらの資質・能力をあわせることで作品を作り出すことができるのです。このことは他の仕事や生活においても言えることだと思いませんか？

　「体験活動」という言葉が学習指導要領で示されてから大分経ちますが、子どもにとって体験活動の必要性は今も変わりません。今年3月に示された県の教育振興運動プラン(2024～2028）においても、「体験活動の充実」を呼びかけています。学校だけではなく、家庭や地域で多様な体験活動（自然体験、社会体験、文化的体験、読書、遊び、手伝い等）を経験をすることは子どもの成長によい影響を与えるとされています。

　明日からゴールデンウィーク後半ですね。何か新しいことをさせてみませんか？

補足：2002年当時、新海誠監督が使っていたパソコンは一式で100万円を超えると思われるものでしたが、現在のノートパソコンの性能には遠く及びません。

参考資料
文部科学省「小学校のプログラミング教育の手引き」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1403162.htm
文部科学省「新学習指導要領のポイント」
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/05/21/1416331_001.pdf
岩手県教育委員会「教育振興運動プラン（2024～2028）」
https://manabinet.pref.iwate.jp/index.php/cooperation/kyoshin/
すこやかマガジン第829号【華麗（カレー）にプログラミング！？】
https://manabinet.pref.iwate.jp/index.php/mail-mag/sukoyaka-mag/sukoyaka829/

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