すこやかマガジン第847号
子どもの性教育
9月28日配信
子どもと一緒にテレビ番組を見ている時に、セクシャルな会話やシーンに出くわすことがあります。また、性に関する犯罪や社会問題等も毎日のように報道されています。子どもがもっと小さかった頃、そのような場面で「ねえ、これどういう意味?」などと質問されはしまいか…と心拍数が上昇したものです。
最近ふと、中学生になった我が子に、これまで親として『性教育』と呼べるものをしてきただろうか…と考えました。ほとんどしてこなかった、というのが正直なところです。性教育の大切さは感じながら思春期になるまで後回しにしてきてしまいました。
「必要と思っていながらも何もしてこなかった」理由を考えてみました。思いつくのは、①自分がしっかりした「性教育」をほとんど教わってこなかったため、何をどう教えればよいかわからない ②「性教育」と聞いて浮かぶイメージが狭い ③「寝た子を起こすな」的な意識がある の3点です。特に②については、性教育のイメージが「生殖」「性感染症の予防」に偏ってしまっているのではないかと感じます。性教育はもっと幅広いはずです(ユネスコの「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」には、関係性、価値・権利・文化、ジェンダーの理解など非常に広い範囲を教える“包括的性教育”を行うことが記されています)。
経済学者である斎藤幸平氏は、著書『ぼくはウーバーで捻挫し、山でシカと戦い、水俣で泣いた』[KADOKAWA]で、子育て真っ最中の父親として子どもの性教育について学んだ経験をもとに、「性教育は本来、人権教育である」として以下のように述べています。
幼少期からの性教育により、
→ 「子どもたちが体に関する正しい知識を身に付け、互いを尊重し合う人間関係を築く」
→ 「自尊感情が高まり、自己肯定感が得られる」
→ 「自分の体を大事にし、何かあったときは親に自分の言葉で伝えることができる」
→ 「他人の体を尊重し、性加害をしてしまうリスクも抑えられる(自己肯定感が低ければ仮に知識があっても自暴自棄になったり他 人も傷つけたりしてしまう)」
→ 「子ども自身だけでなく周りの人々のよりよい生き方につながる」
私が抱いていた性教育のイメージにはなかった「自尊感情」「自己肯定感」という言葉に、「なるほど」と考えさせられました。
家庭での会話や親の行動が「無意図的に」性教育、人権教育につながっていることも多いと思いますが、同時に親として「意図的に」性教育についての知識を得たり伝え方を考えたりしたいところです。その手段の1つとして、絵本があります。
・『あっ!そうなんだ!わたしのからだ』(エイデル研究所) https://www.eidell.co.jp/books/?p=11008
・『あっ!そうなんだ!性と生 幼児・小学生そしておとなへ』(エイデル研究所) https://www.eidell.co.jp/books/?p=4529
どちらの絵本も、子ども向けの「絵本編」と、そのテーマの伝え方のポイントが書かれたおとな向けの「解説編」で構成されています。
その他にも様々な出版社から、一緒に読み、学べる性教育の絵本が出版されていますので、ぜひ一度手に取って読んでみてはいかがでしょうか。
ヨーロッパでは、性教育は「0歳から」がスタンダードになっているのだそうです。
私も「もう遅い」「できない」と諦めることなく、できることから学び、実践していこうと思います。
【参考】
https://sexology.life/world/itgse/
https://www.nhk.or.jp/minplus/0026/topic031.html