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すこやかマガジン第880号

2024年6月27日

言葉で「見る」

みなさんこんにちは。
白鳥建二さんという方をご存じでしょうか?
2022年 Yahoo!ニュース 本屋大賞 ノンフィクション本大賞を受賞した『目の見えない白鳥さんとアートを見に行く』(川内有緒 著、集英社インターナショナル)や同様のタイトルで映画にもなっているので、ご存じの方もいるかもしれません。

白鳥さんは、本のタイトルからわかる通り、全盲の美術鑑賞者です。
「生まれつき弱視で、絵本などを見た記憶もない」と語る白鳥さんは、20代半ばで完全に視力を失ってしまいますが、それでも年に何十回も美術館に通っています。

どうやって絵を見るのか? それは「言葉」を使って見るというもの。
“見えない人(白鳥さん)”が問いを投げかけ、“見える人(川内さんら)”は作品をじっくり観察し、色・雰囲気・印象等を言葉で伝えていく。そうして障がいがある人もない人も一緒になって作品を探っていくという方法で鑑賞するそうです。

様々なエピソードとともに、考えさせられる言葉も数多くありますので、その一部を紹介します。
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“こうしてみんなで作品を見る目的は、正解を見つけることでもなければ、白鳥さんに正しい答えを教えることでもなく、ましてや、全員が同じものを同じように見ることでもない。
それよりも、異なる人生を生きてきたわたしたちが同じ時間を過ごしながら、お互いの言葉に耳を傾ける。(中略)そうして、ひととひととの間にある境界線を一歩ずつ超えていこうとすることで、わたしたちは新しい「まなざし」を獲得する。“(P160)

「俺さあ、思ったんだけどさ、障害ってさあ、社会の関わりの中で生まれるんだよね。本人にとっては障害があるかなんて関係ないんだよ。研究者や行政が『障害者』を作り上げるだけなんだよね」(P.187)
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著者の川内さんは、友人の誘いで白鳥さんと美術館にいくことになり、白鳥さんのために作品の説明をしながら一緒に鑑賞することで、自分の行為は「見える人見えない人の差を縮める(介助)のではなく、言葉を足がかりに、「見える・見えない」「わかる・わからない」の違いを共有し、対等に対話すること」等、様々なことがみえてきます。
アートが持つ力、社会のこと、生きること、障がいをもつこと、白鳥さんについて…。さまざまなテーマを抱きながら美術館を楽しむことで世界が広がる一冊です。

私が空を自由に翔べないことが当たり前であるように、生まれつき目が見えない人もまたそれを当たり前のこととして捉えているように感じました。同時に、私が勝手に障がいをとても不便で不幸なこととして扱っていたのではないか、共生社会の実現と言いながら、こちら側で垣根を作ってしまっていないか等、たくさんのことを考えさせられました。

考え方が人と違うからと言って、相手も自分も間違っているわけではなく、違いがあるから新たな発見がある。異なる他人も他人と異なる自分も受け入れることが生きやすい社会を創るのではないかと思いました。

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