8.思春期編③

~子育てワンポイントアドバイス~

(11)進路指導

-進路は親子の語らい-

中学2年生になると1年生のときとは違い、どうしても自分の進路や受験について意識し始めます。 将来について考える最初の時期ではないでしょうか。

親子で、進路や受験の話題になると、「希望する高校=予想合格点」という話し合いに終始してはいないでしょうか。

親はややもすると、「子どもがテストで何点とったか」「クラスで何番目か」などと他の子どもの点数との 比較に目を奪われがちになります。親の期待からだけで子どもを評価することは、子どもたち一人ひとりの個性や成長のためによくありません。

中学2年生は、子どもとしての一面をもちながらも、内面は鋭い知性と感性をたくわえつつある時期でもあります。ともに人生を語り、生活を共有できる年齢になっていることに気付いてほしいものです。この時期、子どもたちは、周囲からのアドバイスや親子の会話によって、自分自身も知らずにいた新たな能力や適性に気付くことが多くあります。

子どもの意志を尊重しながら、進路や受験、将来について大いに語り合いたいものです。 将来を見通し、自分の好きなこと、打ち込みたいことが見えるようになると、勉強は、単なる受験だけにあるものではないという自覚も芽生えてきます。

◆◇ワンポイントアドバイス◇◆
子どもには子どもの人生があります。常に親の価値観だけで方向を決めていると、子どもは独自の価値観を形成できなくなってしまいます。

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(12)地域が育てる勤労意欲

今、中学生は、地域に目を向け、地域に学び、地域で育っています。

中学生時代は、大人への一歩を踏み出す重要な時期です。 家庭や学校、地域社会で出会うさまざまな体験が人間形成の貴重な糧となり、 進路を決定する能力や態度を育てます。

多くの中学校では、「まちとの関わり」「人との関わり」をねらいとして、地域での職場体験や ボランティア活動を行っています。子どもたちは、社会体験を通じて地域社会とのつながりを学んでいます。

ある職場で体験学習を終えた子どもは、「働くことの大変さ、社会人として身に付けておかなければならないマナーの大切さを理解した」と感想文に記しています。 また、親の職場を訪問見学した子どもは、「親の働く姿に感動し、仕事の厳しさを知った」と 感想を述べています。

このように多くの子どもたちは、働くことや社会に奉仕することによって得られる達成感や喜びを体得しています。地域において、多くの社会体験を重ねることは、自分の職業の適性や将来設計について考えるよい機会となっています。

◆◇ワンポイントアドバイス◇◆
学習も仕事も人生も、汗を流し、失敗を重ねながら達成していくものです。子どもを励まし、あたたかく見守っていきましょう。親は子どもの応援団です。

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(13)子どもの心を早くキャッチしよう

 ~いじめに対する親の対応~
【いじめのパターン】
いじめには、身体的暴力、金品・物品の強要、無視・仲間はずれ、一見悪ふざけに見える行為・ からかい・ひやかし等さまざまなパターンがあります
【いじめは早期発見が大切】
いじめにあった子どもの多くは、誰にも言えずとても悩んでいます。また、いじめを受けている子どもはさまざまな理由でそのことを知られないように隠します。しかし、どんな場合でも子ども自身から何らかのサインが出ているものです。いじめに対する指導は、 早期発見が大切です。子どものサインを大人が見逃さないように気を付けるのが大切になります。 子どもの変化に気を付けましょう。
【いじめに気付いた時の対応】
いじめに気付いた時は、子どもが追いつめられている気持ちをまず受け入れ、心から安心できる環境づくりと子どもの味方になるという姿勢を崩さず対応していくことが大切です。

いじめに気付いたら、すぐに担任に子どもの悩みを正しく伝え、解決の方法を一緒に考えましょう。

◆◇ワンポイントアドバイス◇◆
~家庭で心がけたいこと~
①子どもが安らげる家庭であること。
②何でも気軽に話せる雰囲気をつくること。
③家族みんなが、常に相手を思いやる気持ちで話したり行動した
 りすることに努めること。

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(14)子どもの心を早くキャッチしよう

 ~子どもが不登校を始めたとき~

子どもが身体的な病気とは思えないのに学校に行かなくなったとき、親は驚き、とまどい、 そしてどうしたらよいかわからず、立ちすくんでしまうのではないでしょうか。

このような時どのようにしたらよいでしょうか。

明らかな身体疾患がなく、学校を休み出した場合は、躊躇(ちゅうちょ)せずに小児科の診察を受けましょう。 身体の病気がないかどうか、きちんと調べてもらうことが大切です。学校に行かなくなった、 行けなくなった子どもの35%に身体の病気が見つかり、それを治療することで登校できるようになっています 。身体の病気の中には、起立性調整障害のように不定愁訴が多く、普通に見ただけでは身体の病気とは 思えないものもあるので、単純に不登校と決めつけるのは大変危険なことです。

学校に行けないのは、身体の病気ではなく、心因性の不登校と考えられたときでも小児科医は 心因と理解した上で、あえて今出ている身体症状に対応します。そして心因性の原因が深く、カウンセリングが必要な時はカウンセリングを受けるようにしましょう。

誤解している人が多いようですが、子どもの心に異常があるので精神科医に診てもらうわけで、 不登校児に何かよいアドバイスをしてもらうために臨床心理士がカウンセリングをするのではないのです。 臨床心理士は、子どものよき理解者、話し相手としての専門家なのです。不登校は人との関わりの中でしかいやすことができないのですが、カウンセラーは人との関わり合いが途切れそうになっている不登校の子どもの心をつなぎとめ、子ども自身が何らかの意味での転機、契機などをつかんだり、発見したりするまで子どもの心を支えます。

不登校が始まり2ヵ月以内に受診して、カウンセリング等の適切な対応を受けた例と、2ヵ月以上たってから受診した例では、前者は平均36日で再登校できていますが、 後者は平均527日もかかっています。不登校の原因は育ち方、学校環境、社会環境が複雑に組み合ったもので、 すべての不登校児が初期に適切な対応を受けなければ早期に登校できるとは思いませんが、 初期に適切な対応を受けることで比較的早期に再登校できる子どもも多いと思います。 「登校刺激を加えない方がよい」などというのを正しいとして、結局何もしないままでいるというのが、 一番よくないことです。

◆◇ワンポイントアドバイス◇◆
~登校刺激について~
やみくもに登校刺激を加えるのは良くありませんが、次の3つのケースは登校刺激が必要と思われます。
①保育園、幼稚園、小学1~2年生までの登園渋りや不登校は、「いじめっ子がいる」「先生が怖い」等の 単純な理由によるもので、原因を解決してあげた上で登校を促しましょう。 親が入り口までついていってあげるのもよいでしょう。
②不登校のごく初期、登校刺激が「期待」の表明としてされるときは、効果がある場合があります。 「強制」にならないようにしてみてください。「先生が待っていてくれる」 「自分の親がこんなにも自分のことを心配してくれている」というメッセージを 受け止めるだけでも登校できるようになるかもしれません。
③不登校の回復期で、生活リズムも正常に戻り、家族や友だちとの会話も復活し、 外出も普通にできるようになったとき、きっかけをつくるために登校を誘ってみることも 一つの試みになります。

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(15)社会の問題に目を向けよう

下降気味だった少年非行の発生件数が、下げ止まりの気配を見せてきています。 数ばかりではありません。質的にも凶悪化の一途をたどっています。

県内では、毎年1万人余の少年が補導されています。そのうち、中学生は約10パーセントの 1,000人余りで、窃盗、恐喝、深夜徘徊、急性アルコール中毒、出会い系サイトからみの 性非行等で補導されています。自己の欲望にのみ従順で、家族や被害者の苦しみなどに、 彼らの想像力は及びません。

犯罪被害少年の問題も深刻です。全国では、平成12年中に17人の中学生が犯罪の被害で命を落とし、146名が強姦の被害にあいました。事件や事故、災害等によって心に深い傷を負った被害者は、 長い年月をPTSD(心的外傷後ストレス障害)によって苦しむといわれています。

社会の動きや身の回りの出来事に関心をもち、家族で話し合う習慣をつくりましょう。 現実に起きている問題について語り合うことは、一種のシミュレーションともなり、 心のブレーキ機能やセキュリティを高めることにもつながります。

◆◇ワンポイントアドバイス◇◆
普段から、家族で緊急時の連絡方法、緊急避難の場所・方法等を取り決めておくと、 いざというときに威力を発揮します。

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