6.小学校高学年編③

~子育てワンポイントアドバイス~

(11)手足に力を

「塾通いは中学校からでは遅いそうよ」「特に英語はね」こんな会話が聞こえてきます。

まわりがみんな塾通いをしていると、自分の子どもだけが落ちこぼれるのではないかとあせってしまう。そんな心境になってしまいがちです。でも、早く始めた方がうまくいくのでしょうか。就学前から勉強を強いられ、小学校のうちに花は開いたけれども、15の春には泣いたという例はよく聞きます。

小学校は、基礎体力、基礎学力をつける大事な時期です。肥料を蓄える時期なのです。それもすぐ効き目が現れるような化学肥料ではだめです。後でじんわりと効いてくるような有機肥料タイプがいいのです。

学校では勉強を、家庭では体を動かし、手足を使うことを積極的にさせましょう。十分遊ばせ、家の仕事をしっかりさせることは、教科の学習と同じように大切です。子どもは体を動かし、 手足を使うことを通して、上手にはやく仕上げようといろいろ工夫もします。自分でできた喜びを味わうことで、 後に学習の効果をあげる原動力となっていくのです。

足腰を鍛え、手足に知恵をつける。これが見えない学力なのです。この力が肥やしとなって、 来るべき時期に見える学力となって花が開きます。しかも、生きる力もあわせてついてきます。 「手は外に出ている脳」とも言います。手を使えば使うほど、脳も発達します。急がばまわれというでしょう。 まずは、じっくりと基礎づくりをさせたいものです。

◆◇ワンポイントアドバイス◇◆
日曜日のお昼ご飯づくり、洗濯、掃除などを家族みんなで取り組んでみるのもいいですね。

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(12)読書のすすめ

読書は心の栄養です。本を読むことで、体験したことのない多くのことがらを知り、物の見方や考え方を学び、人間としての感性を磨くことができます。

本から得た知識や考え方が肥やしとなって、考えを豊かにし、様々な場面で支えとなってくれることもあります。本は、生涯の友となります。

さて、本を好きにするためには、本のある環境をつくることです。いつでも手の届く所に本が置いてあるよう、気を配りたいものです。その中で、自分の欲しい本と巡り合うことができれば、とても喜ばしいことです。特に高学年の子どもは知的好奇心や情緒が発達する時期でもあり、夢や希望、素晴らしい生き方などが描かれた本は子ども達の宝物となるでしょう。ですから、学習に直接役立つような本だけでなく、子ども達の情緒を育むような本等、偏りなくそろっていれば申し分ありません。

と言っても、家庭にありとあらゆる本をそろえておかなければならないというのではありません。地域の図書館を利用したり、本のリサイクルなどを活用したりしてもいいでしょう。とにかく、家庭で本に親しむ雰囲気をつくっていくことが、子どもにとって一番の読書環境といえます。

◆◇ワンポイントアドバイス◇◆
毎日、短い時間でいいから、テレビを消して、家族で本を読んでみませんか。親が熱中して本を読む姿を見せるのもいいことです。

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(13)家庭学習のポイント

「家庭学習って、宿題のこと?」そんな疑問を持つ人もいるかもしれません。 宿題をすることも家庭学習の一部ですが、すべてではありません。家庭における学習は、 生きた知恵を得ることと学校などで学んだ様々な知恵を実際に生かしていくことが大きなねらいとなります。

実際は「何をすればいいの?」「どんなことをさせたらいいの?」と悩む子どもや親もいます。 そんな子どもには、学校で学習した内容をもとに家庭での学習を計画させるのです。はじめは、 反復練習を中心に、次は自分なりに教科書や参考書をまとめることから取り組ませ、 だんだんに質の高い学習へと進んでいけばいいのです。まずは、机に向かわせ、 勉強するのだという気持ちを起こさせましょう。

興味をもったら、何でも取り組ませましょう。実は、それが大事なのです。頼まれ仕事ではなく、新しい知識を学び、身に付ける楽しさを味わわせたいものです。しかも、習慣となればいうことはありません。 徐々に「自分で学習する力」がついていきます。

~家庭学習の習慣化はこうして~
①毎日、机に向かう時間を決めて
②集中できるのはせいぜい20分、あきたら別な教科にチェンジ
③夜遅くまでやっても疲れるだけ、食事の直後も能率あがらず
④量より質で勝負して

~親の役割~
①やる気を起こす雰囲気づくり
②子どもが机に向かったら、家族も勉強
③テレビを見ながら、遊びながらといった「ながら勉強」はやめ
 させて

~勉強中に絶対さけたい親の一言~
①バカね、全然できないんじゃないの
②どうせうちの子だから、たかが知れてるわ
③何回言ったらわかるの

◆◇ワンポイントアドバイス◇◆
机に向かっているタイミングをうまくとらえ、「がんばってるね」の一言をかけてあげましょう。

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(14)集団遊びを子ども達へ

ガキ大将を中心に毎日空き地に集まっては様々な遊びをした経験があるのは、40代以上の世代の方々でしょうか。今はあまり見られない光景です。その時のガキ大将は必ずしも成績の良い子だとは限りませんでした。腕力が強く、しかし、幼い子や身体の弱い子には気配りができるやさしさをもった子がなることが多かったのです。 幼い子はその集団の中で、大きい子ども達の行動を見て、ルールを身に付けていきました。

缶けり、宝さがし、鬼ごっこ、ベーゴマ、釘さし……、身の回りにある物を工夫して、 自分達が工夫した遊びに夢中になったものです。群れて遊ぶ子ども達の文化が作られ、 そこから子ども達は社会的なルールを身に付けていきました。

ところが、社会の急激な変化に伴い、大人達の価値観も変わっていく中で、子ども達の世界も変わってきました。今や、日常生活の中で子ども達は年の違う子ども達と過ごすことはめったになくなり、TVゲームに代表されるような機械との遊びが中心となり、自然や生きものを相手にすることも少なくなってしまったのが現状です。

そこで、青少年教育施設や公民館等では、失われつつある集団遊びの場を復活させ、子ども達に体験させようと様々な事業を組んでいます。参加した子ども達は皆、生き生きとした表情で仲間と活動しています。この満足しきった楽しそうな顔が、子ども本来の姿であり、 昔も今も変わりはありません。日常生活の中でも、子ども達が群れて遊べるような環境や機会を積極的に作り出していくものや親や地域の大きな努めです。

◆◇ワンポイントアドバイス◇◆
時には、地域の子ども達を集めて、一緒に遊んでみませんか。
すべての親がつきっきりになる必要はありません。子ども同士でふれあう機会の中で、子ども達はおのずと成長していきます。

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(15)たくましい子どもを育てる失敗体験

学校で一、二を争う成績のA君とB君が有名高校を受験し、いつもA君を追い越せないでいた B君だけが合格したそうです。A君は、B君を逆恨みし、慰めにたずねてきたB君に対し、「世界で一番憎い相手」と言って会おうともしません。「僕だけ通ってごめんね」とだけ言って、 涙をいっぱいためて帰ったB君を見て、A君は恥ずかしさで胸がいっぱいになったそうです。「自分だったら、落ちたライバルを慰めに行っただろうか。人の事を考えもしないで、自分のことばかり考えるような人間は落ちて当たり前。本当の人間にするために天は僕を落としたんだ」と A君は自分を責めたそうです。「今まで思うようになることだけが幸福だと考えてきたけれども、 B君のおかげで思うようにならないことの方が人生にとって大切だということを知った」と A君は述べています。(東井義雄著「根を養えば樹はおのずから育つ」より)

一家族あたりの子どもの数も少なくなっている今、子どもにかける手はとても多くなっているようです。すっかりおぜん立てをしてしまったところに子どもが登場し、何の苦もなく課題をクリアしてします。

失敗することなく、あたかも自分だけの力だけですべてが解決できると勘違いをしてしまったまま 成長したらそれこそ大変です。自力で前に進まなければならなくなったときに思うようにできなかったら、そこで挫折してしまいます。失敗や挫折をすることは長い人生の中ではままあります。小さい時から失敗しても、それで終わりにするのではなく、次に成功するために努力するという 経験を積ませていくことが大事です。

◆◇ワンポイントアドバイス◇◆
親だって失敗したことはあるはずです。さりげなく、失敗したときの話を聞かせるのもいいですね。

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