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すこやかマガジン第970号

時間は何のため?

 みなさん、こんにちは。みなさんは、休日をどのように過ごしていますか。休日はゆっくり休むはずなのに、気が付くと「やることリスト」をこなして終わっている…。そんなことはないでしょうか。一週間の計画を立て、買い物に行き、家事を片付け、子どもの予定も効率よく回す。一見、とても合理的で無駄のない過ごし方です。でも、一日を振り返ったとき、なぜか心が満たされたという感覚が残らない。読者のみなさんの中で同じような気持ちになった方はいらっしゃらないでしょうか。

 例えば、子どもと公園に行っても、「ついでに買い物を済ませよう」「帰ったらすぐ次の予定へ」そんなふうに考えていると、子どもと一緒に時間を過ごしているつもりでも、実はその時間を味わえていない自分に気がつくことがあります。

 そんなとき、先日の読書ボランティア研修会でもご紹介した「中高生のためのおすすめ図書100選」、通称「いわ100」を何気なくめくっていたところ、ある本が目につきました。それは、1973年に発表されたドイツの児童文学、ミヒャエル・エンデの『モモ』です。児童文学という位置づけですが、寓話的で哲学的な内容であり、私たち大人も深く考えさせられる物語でした。

 物語の主人公は、町のはずれに住む不思議な少女モモ。モモの特別な力は、「人の話を深く聞くこと」です。モモと話した人々は、心が軽くなり、自分で問題の答えに気がついていきます。ところがある日、「灰色の男たち」が現れます。彼らは「時間を節約すれば豊かになれる」と人々に語り、次々と時間を奪っていきます。紙面の関係上、あらすじを詳しくご紹介することはできませんが、この本に貫かれている大きなテーマは、「時間は何のためにあるのか」という問いです。

 私たちの生活や仕事は、常に「合理性」「効率性」「経済性」をいかに高めるかが優先され、与えられた時間をじっくり味わうことを、いつの間にか後回しにしてしまっているのではないでしょうか。

 子どもの居場所研究をしている早稲田大学の阿比留久美教授は、著書の中で「就活や終活などに代表される『○活』など、わたしたちは常に少し先の未来に向けて、自分の人生をどう形作っていくかを意識的に行うことを求められており、しんどさを感じる」と述べています。このことは「コストパフォーマンス」「タイムパフォーマンス」等を追い求めることが、生涯にわたって続いていく現代社会への警鐘とも言えると考えられます。

 だからこそ、休日くらいは、「予定どおりに過ごすこと」ではなく、「その時間をどう味わうか」に目を向けてみてもよいのかもしれません。

「時間は節約するためのものではなく、味わうためのもの」

『モモ』を通して、そんなことをあらためて考えさせられました。


参考文献 「孤独と居場所の社会学」 阿比留久美 著 (大和書房,2022年)
改訂版「いわ100」はこちら 「モモ」はp24に掲載↓
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