令和6年度 岩手県生涯学習推進研究発表会
実施日:令和7年1月30日(木)、31日(金)
実施報告
副題を「岩手の人づくり・つながりづくり・地域づくりフォーラム2024」とし、1日目は、本年度当センターが取り組んだ調査研究の成果発表と協議を行い、2日目は、「SDGsの実現に向けて、社会教育に期待される役割を考える」をテーマに基調講演とパネルディスカッションを行いました。センター参集とオンライン視聴を併用して開催し、生涯学習・社会教育に携わる方を中心に県内外から174名が参加しました。
【1日目】研究発表・協議
研究発表では、「『博物館』の地域における社会教育的役割に関する研究」を土谷文子社会教育主事が、「SDGs(持続可能な開発目標)の実現に向けた社会教育の役割と課題に関する研究」を齋藤剛主任社会教育主事がそれぞれ発表しました。その後の協議は、岩手大学 名誉教授 新妻二男氏に進行していただき、それぞれの研究内容を深めると共に、研究に対するご助言とコメントをいただきました。

土谷 文子 社会教育主事

齋藤 剛 主任社会教育主事

岩手大学 名誉教授 新妻二男氏のコーディネートによる研究協議
【2日目】基調講演「SDGs第二歩~社会教育・生涯学習に期待される役割~」
2日目の午前中は、上智大学名誉教授 田中治彦氏に御講演いただきました。

上智大学 名誉教授 田中 治彦 氏
【講演要旨】
・SDGsがどこまでできているかについて、学校では17目標の理解や知識の習得、行動としての節約やリサイクル、また、自治体での啓発(タグ付け)等、第2段階で留まっているところが多い。
・「変革」は「改善」とは違う。タグ付けだけでは、「変革」にはならない。
ーSDGs学習の4段階ー

・SDGsを第3段階へと進めるためには、今までやっていることをつなぐ必要がある。その際に生じる「矛盾」を教え、葛藤させる。「矛盾」についての解決策を見出そうとして、すでに取り組んでいる人たちがいる。社会教育にやってほしいことは、その人たちを「つなぐ」こと。①ヨコにつなぐ(様々な団体、ステークホルダー、環境分野、福祉分野、まちづくり分野等)意図的につなぐことによって、SDGsをより推進していくことができる。②タテにつなぐ(世代間、高齢者、現役世代、若者等)誰一人取り残さないということに気を付けてつなぐ。
・「誰一人取り残さない」は否定形なので、「誰にでも居場所がある世界を創りましょう」としたい。
“Create a world everyone has an ibasyo!”
※詳しく知りたい方はこちらからYouTube・田中治彦のグローカルセミナー
https://www.youtube.com/@momosuke3233
【2日目】パネルディスカッション「SDGsを具体的に推進していくために、関係機関はどのように連携していけばよいのか」
【事例発表】①室根まちづくり協議会 室根市民センター

所長 金森 勝利 氏 主事 菅原 夏希 氏
部会の1つに「室根と愉快な仲間たち」がある。若者目線で室根の未来を考える会である。先輩世代から成功体験を積ませてもらった「室愉会」メンバーが、中高生の地域参画のためのプロジェクトを行ったり、その他の部会でも「持続可能な地域づくりの担い手」として、計画段階から市民が参画するような事業を行ったりしているという事例をたくさん紹介いただきました。
【事例発表】②陸前高田市 政策推進室

主事 清水 悠輔 氏
震災によってすべての市民が社会的弱者になり、市民の50%がUD(ユニバーサルデザイン)のまちを必要としているという現状があり、「ノーマライゼーション」という言葉がいらないまちづくりを推進してきたことがSDGsの理念に合致し、SDGs未来都市に県内で初めて選定された。SDGsを推進していくためには多様な主体との連携が必要であり、そのハブになっているのが「SDGs推進プラットホーム」である。市独自のゴールを7つに定め、推進してきた取組をたくさん紹介していただきました。
【事例発表】③紫波町立日詰小学校

校長 森 和佳子 氏
学校運営協議会からうまれた「平井邸学習」で得た地域学習の手応えが、子どもたちの課題の解決になるのではないかということで、地域と創り上げる教育課程を「花の虹タイム」と命名し、地域の願いである「人に焦点を当てた学習」とした。地域とともにある学校で、持続可能な社会を実現する子の資質・能力(自ら考え行動し挑戦する)を育てることで、持続可能な社会が実現していくということを子ども達の姿に見ることができました。
【協 議】

①市民センターの立場
地域の一人ひとりの思いや意見が形になっていくということがゆくゆくは地域の担い手になっていき持続可能な地域となる。
②行政の立場
SDGsは官民連携。市民の活動を学ぶ姿勢がプラットホームを創っていった。
③学校の立場
第2段階の先にいくには、地域に開かれた教育課程のマネジメントが必要。学校は完璧にしてからお願いするのではなく、学校のオーダー(目指す子ども像、学習でこういう力をつけたい)を地域にしっかり伝え一緒に教育課程を創っていく。
<助言>
①ヨコにつなぐ
②タテにつなぐ
③過去と今とをつないで未来につなぐ(平井邸学習より)
④地域と自分と国と世界をつなぐ
※つなげていかないと課題の解決が難しい時代である。自分たちに何ができるか、生涯学習・社会教育の場で何ができるか考え続けていかなければならない。やろうと思えば社会教育・生涯学習はいいポジションにある。
【参加者の感想】
●生涯学習振興や社会教育を主軸とした地域づくりの視点にしっかりと立った両研究は、今後の幸せな地域づくりを進める上で、大変有意義であると思った。
●研究協議については、新妻先生のリードのもと、初めて耳にすることも多く、とてもよい勉強になった。会場からの質問も鋭い視点からのもので、広がりや深まりが出た点がよかった。
●SDGsが学校現場や社会に定着してきた今、実践していく矛盾が出てきた時期に田中先生のご講演は大変参考になった。課題に気付き解決策を考えていくことが持続可能な社会の実現に繋がると感じた。
●地域の実情に寄り添い、改善や発展させていこうとする思いある取組が結果的にSDGsにつながっているということは、SDGsは『社会教育』の充実と密接につながるということだと思った。
●コミュニティスクールの活用による学校や地域の活性化や、関係機関との連携による地域の活性化に社会教育の役割が大きいことが分かった。
【受講者の評価】
A (有意義) 81.8%
B (どちらかといえば有意義) 16.9%
C (どちらかといえば有意義でない) 1.3%
D (有意義でない) 0%
【担当者から】
社会教育・生涯学習の得意技(「つなぐ」「つながる」)で、子どもや若者が育ち、地域が活性化し、持続可能な社会が実現することを考えると、社会教育の役割はますます大きくなってきているのだと思いました。推進センターで一緒に学びましょう。


- 1 主催/主管
- 岩手県教育委員会/岩手県立生涯学習推進センター
- 2 後 援(予定)
- 岩手県市町村教育委員会協議会、岩手県社会教育連絡協議会
- 3 対 象
- (1)県及び市町村の生涯学習・社会教育関係者
(2)全国の生涯学習・社会教育関係機関や団体関係者
(3)県及び市町村の地域づくり関係者
(4)NPO等民間団体関係者
(5)学校関係者
(6)関心のある方
- 4 期 日
- 令和7年1月30日(木)・1月31日(金)
- 5 会 場(定員)
- (1)参集…岩手県立生涯学習推進センター(100名)
〒025-0301 花巻市北湯口2-82-13 TEL 0198-27-4555
(2)オンライン…YouTubeライブ配信(無制限)
※なお、今回の研究発表会は、Webサイト「まなびネットいわて」特設ページにて、2月28日(金)まで受講申込者限定オンデマンド配信も行います。
- 6 申込方法
- Webサイト「まなびネットいわて」から申し込んでください。
【申込み締切:令和7年1月16日(木)】
- 7 日程及び内容
- 【1月30日(木)】
(1)研究発表・協議 13:45~16:00
➀「博物館等施設のもつ地域における社会教育的役割とは何か」(1/2年次)
生涯学習推進センター 社会教育主事 土谷 文子
➁「SDGs(持続可能な開発目標)の実現に向けた社会教育の役割と課題」(2/2年次)
生涯学習推進センター 主任社会教育主事 齋藤 剛
〔コーディネーター・助言〕 岩手大学 名誉教授 新妻 二男 氏
【1月31日(金)】
(2)基調講演 10:00~12:00
「SDGsの実現に向けて、社会教育に期待される役割とは(仮)」
〔講 師〕 上智大学 名誉教授 田中 治彦 氏
(3)パネルディスカッション 13:00~15:30
「SDGsを具体的に推進していくために、関係機関はどのように連携していけばよいのか」
〔コーディネーター・助言〕 上智大学 名誉教授 田中 治彦 氏
〔事例発表・パネリスト〕
① 室根まちづくり協議会 室根市民センター 所長 金森 勝利 氏
主事 菅原 夏希 氏
② 陸前高田市政策推進室 主事 清水 悠輔 氏
③ 紫波町立日詰小学校 校長 森 和佳子 氏
※パネルディスカッションでは、当センター 齋藤 剛 主任社会教育主事がパネリストとして参加します。
- 8 発表会資料
- 研究発表会に係る資料はWeb サイト「まなびネットいわて」特設ページに掲載します。参加者自身で資料を印刷、またはタブレット等にダウンロードの上、御準備くださるようお願いします。
- 9 費 用
- 派遣者において負担願います。
- 10 その他
- (1) 2日目に御参加の方は、昼食を各自ご用意ください。
(2) 県立生涯学習推進センターまでの交通案内及び駐車場は下記よりご確認ください。
「まなびネットいわて」>[生涯学習推進センター]>[アクセス]
- 11 受講申込み 下記フォームに必要事項を入力し、[送信]をクリックしてください。後日担当者から確認のメールを差し上げます。(入力いただいた情報は関係機関で受講に関係した処理のみに使用いたします)
***申込フォーム***
※上の[送信]ボタンをクリックして、送信が完了すると、ボタンの下に「ありがとうございます。メッセージは送信されました。」と表示されます。繰り返し送信ボタンを押さないよう、ご注意ください。
※申込フォームに記載された「受講申込者メールアドレス」宛に申込内容等の「自動返信メール」が届きますが、『gmail』については、自動返信メールが届かないことが確認されています。受講申込のメールはこちらに届いていますが、ご心配な方は、電話でご確認下さい。